河口湖美術館 (KAWAGUCHIKO MUSEUM OF ART)
日本を象徴する山である富士山。世界遺産に登録されたことは、記憶に新しいところです。古来、富士山は浮世絵、短歌など芸術作品のモチーフとして取り上げられています。形式こそ違えど、様々な姿に変容し、日本の文化に深く根ざしています。ときにその荘厳な独立峰の風格から神格化され信仰の対象にもなっています。インターネットや通信技術が進歩するはるか以前、フィンセント・ファン・ゴッホによる作品の背景に歌川広重の浮世絵が模写されるなど、富士山に宿るジャポニズムは、日本のみならず海を渡り、西洋絵画文化にも影響を与えました。
歌川 広重 「富士三十六景 甲斐御坂峠」 江戸時代 紙に木版 河口湖美術館蔵
山梨県富士河口湖町にある河口湖美術館は富士山に関連する絵画、写真作品をアーカイブした美術館です。江戸時代の浮世絵から昭和、平成にかけて日本の作家により富士山が描かれた作品を常設しています。また、1999 年から一般公募の写真コンテスト「富士山写真大賞」を実施してきました。毎年1月から3月にかけて開催する入賞作品展では、プロアマを問わず全国から集まった1000 点を超える応募作品を、プロカメラマン2名が審査し、受賞作品を展示しています。エントランスから展示室、カフェへと続く広いギャラリーには、これまでの受賞作品が常設展示されており、ファインダー越しに捉えられた多角的な富士山を見ることができます。
ギャラリーは広々と天井が高く、両端に飾られた展示作品を際立たせるように大きな窓からは自然光が美しく差し込みます。
和田 英作 「富士」 1918 年頃 カンヴァスに油彩 河口湖美術館蔵
富士山という一つしか存在しないモチーフであるにもかかわらず、美術館に収められた富士山は質感も形も、一つとして同じものは存在しません。浮世絵・版画・油絵・写真の数々は、手法・時間・場所・表現によって切り取られ、富士山の奥深い造形と魅力、制作した人間の感性の多様性を感じます。
山梨では、ほとんどの場所で富士山を確認することができるため、日常の当たり前の景色として存在しています。しかし、河口湖美術館を訪れ作品を眺めていると改めて富士山の芸術性に気づかされます。自分だけの富士山を見つけ、特別な視点を授かることができるかもしれないという、イマジネーションが喚起されます。
足立 源一郎 「無題」 制作年不詳 カンヴァスに油彩 河口湖美術館蔵
湖畔沿いに佇む近代的な外観は、富士山のように威厳ある印象を抱かせます。1991年に開館し、町が運営。人口2万5千人の自治体の規模から考えると大きな箱物ですが、観光地であるため、外国人観光客を含めたツーリストを対象とする地域観光の重要なパーツの一つとして機能しています。
館内からは、富士山が見えませんが、湖畔沿いに遊歩道があり、美術館から少し歩けば大きな富士山の姿を確認することができます。展示を見た後に実際の富士山を見ながら散歩を楽しむのもいいでしょう。ジョガーやサイクリストが抜群のロケーションを楽しみながら汗を流している姿が見かけられました。
Article written by VALEM co., ltd.
河口湖美術館
〒401-0304
山梨県南都留郡富士河口湖町河口3170
電話:0555-73-8666
※ここから外部へリンクします。開館時間・料金などの詳細は下記リンクを参照してください。
http://www.fkchannel.jp/kgmuse/