甲府ミュージアムハウス
"好き"が詰め込まれた芸術の空間
甲府ミュージアムハウスは2020年12月、山梨県立美術館の目の前にオープンしました。館長の田辺文子さんがこだわったという〇△□をモチーフにした、時計付きの看板が目印です。館内の展示は、レオナール・フジタこと藤田嗣治、山梨県立美術館の「ザ ビッグ・アップルNo.45」でおなじみの佐藤正明、フジ子・ヘミングの絵画、テティベア、エルメスのスカーフと多岐にわたります。
お茶を飲みながら、ゆっくりできる美術館をつくるのが長年の夢だったという田辺館長。展示品は、田辺館長が長年収集してきたコレクションです。ただ集めただけではなく、各美術品には、収集を始めたきっかけやエピソードなど、それぞれの物語があります。
パリで活躍した日本生まれの画家、藤田嗣治(レオナール・フジタ)
藤田嗣治(1886-1968没)はエコール・ド・パリを代表する画家で、明治半ばに日本で生まれ、第一次世界大戦前に渡仏し活躍、その後フランスに帰化しています。藤田の作品「猫十態」に描かれた一枚の中の猫が、田辺館長のお子さんが拾ってきた猫にそっくりだったことから、藤田作品の収集がはじまったそうです。12~3年ほどかけて、「猫十態」10枚すべてが揃いました。
そのほかにも、アメリカで出版された「猫の本」からの20匹やエルメスからの依頼で制作されたという「エルメスの馬」の銅版画とその元となる銅板、藤田の妻、君代さんの遺品である藤田の2冊のデッサン帳など、貴重なコレクションを観ることができます。
甲府出身、ニューヨーク在住の美術家、佐藤正明
山梨県立美術館の「ザ ビッグ・アップルNo.45」といえば、ご存じの方も多いはず。甲府出身の美術家、佐藤正明氏の作品です。佐藤氏と田辺館長はもともと交流があり、佐藤氏のアート展示スペースは作品選びから見せ方まで、すべて佐藤氏本人のプロデュースだそうです。
また、一緒に展示されている佐藤氏の奥様(聖美さん)の世界で一番大きなビーズコンテストでの最優秀賞をはじめ、数々の賞を受賞したビーズワークを中心にした3D刺繡画手芸作品も必見です。
ピアニスト フジ子・ヘミングの絵画
ピアニストのフジ子・ヘミングが絵を描いていることは、あまり知られていません。愛猫家で知られるフジ子・ヘミングの絵画は、度々猫が描かれています。ピアノだけにとどまらず、多彩な才能を持ち合わせていることが感じられます。田辺館長がスウェーデンへの旅行中、現地在住の日本人の方からまだ無名だったフジ子・ヘミングのことを知り、それ以来のファンなのだそうです。
田辺家のクリスマスといえば、もみの木とテディベア
甲府ミュージアムハウスには、シュタイフのテディベアをはじめ、様々なテディベアや人形が展示されています。旧西ドイツで生まれた次男さんへの最初のプレゼントがテディベアであったことから、そこから収集が始まりました。1体、2体と増えていき、クリスマスにもみの木の周りにたくさんのテディベアを飾るのが田辺家の習慣になっていきました。今でもテディベアと人形たちは、田辺館長と4人の子供たちを結ぶ心温まる思い出を与えてくれています。
約2,000枚近くの中から厳選された、エルメスのスカーフ
エルメスのスカーフの収集を始めたきっかけは、シャンソンの「スカーフ」という楽曲だったそうです。コレクションの数は、なんと約2,000枚近くあり、厳選されたスカーフが展示されています。エルメスのスカーフは「カレ」(フランス語で正方形という意味)と呼ばれており、1937年に第1号が誕生し、甲府ミュージアムハウスに展示されている一番古いものは、1940年のものだそうです。
シーズン毎に様々なデザイナーがデザインし新作が発表されていますが、その中には日本人デザイナーもいるそうです。テーマ性のあるデザインと鮮やかな色彩で表現されたカレは、職人の手作りだという製造工程も含め、芸術そのものです。2021年の2月にエルメス表参道店のオープン記念で限定発売された、2020年スカーフコンペティション「LE GRAND PRIX DU CARRE HERMES」においてグランプリを受賞した京森康平氏のデザインのカレも展示されています。
特別展示室は、無料開放されています
ここは、様々な企画が開催されている特別展示室で、入館料を支払わずに入室することができます。イベントなどでの使用料は無料ですが、代わりに1日につき500円をボランティア協会へ主催者名義での寄付金として頂戴しているのだそうです。7月13日(火)~7月18日(日)には、Wire bijou coquette.715 ~ワイヤーバッグ~の展示会が開催されます。ワイヤーテープを使って仕上げるハイクオリティなバッグ。オーダー製作も受け付けているそうです。また、8月6日(金)~27日(金)は神奈川県在住の山本修子さんによる帯アート展を開催。8月19日(木)には帯アートショップ(11:00~/14:00~の2回開催、参加費2,000円)もあります。(詳細はホームページをご確認ください。)
中庭を望むカフェで、ほっと一息。
カフェスペースでは、食事やケーキがいただけます。道路側ではなく中庭に面するつくりになっているため、ゆっくりと静かな時間を過ごすことができます。火曜・金曜限定の、濃厚なチーズフィリングがたっぷりで、食べ応え十分の手作りチーズケーキがおすすめです。カフェスペースのみの利用もできます。
語りつくせないほどの魅力が詰まった甲府ミュージアムハウス。田辺館長をみかけたら、是非それぞれの展示の物語を伺いながら館内をまわってみてください。心温まる、素敵な世界を体感することができます。
Article written by VALEM co., ltd.
甲府ミュージアムハウス
山梨県甲府市貢川2-1-17
Tel.055-236-9133
駐車場完備(15台分)
※詳細は下記アカウントを参照してください。
https://kofu-museum-house.com