槙田商店 ~ 山梨県の伝統産業「郡内織物」を今に伝える~
創業150年。
"先染め" のジャカード織から美しい傘を製造
「雨の日に出かけるのが楽しくなる」。そんな思いを抱いた経験はありますか。
山梨県南都留郡西桂町にある「槙田商店」は、1866年(慶応2)創業。糸を染めてから織る "先染め" のジャカード織から美しい傘を作り、1000年の歴史をもつ「郡内織物」を今に伝えています。
「『槙田商店』は、絹織物の卸問屋として幕末に創業し、時代の流れと共に傘生地を中心とした織物工場に変化を遂げていきました。近年は傘に注目していただいてますが、私たちは傘屋である前に生地屋です。生地屋として、先人が繋いできた郡内織物を地域の工房や職人さんと一緒に守り、伝統産業を今に伝えています。」と槙田商店6代目社長・槇田洋一さんは話します。
傘の企画から組み立てまで一貫製造。職人の丁寧な手仕事を感じるモノづくり
富士吉田市や西桂町をひとくくりにした地域の名称「郡内」で織られた織物は、「郡内織物」や「甲斐絹」として人々に親しまれてきました。中でも「槙田商店」は、商品企画から傘生地の裁断・縫製・金具の取付まで、全ての工程を一貫生産する世界で唯一の老舗織物工場です。社屋から歩いて2,3分の場所にある工場は、学校の体育館ほどの広さに、国内でも数少ない140cm幅の大口電子ジャカードが6台並べられ、軽快な音を立てて動いています。
西桂地域の染め屋さんに特注しているという、富士山の雪解け水で鮮やかに染められた糸がお客さまのオーダーに合わせてセットされ、社内のテキスタイルデザイナーがデザインをしたデータを電子ジャカードにプログラムすることで1枚の傘生地を作り上げています。
何色ものタテ糸とヨコ糸を織ってデザインを表すことで色柄に立体感を出すジャカード織によって出来上がった傘生地は、社内にある別の工房へ運ばれ、裁断・透き見(すきみ)・中縫い・紐付け・中綴じ・仕上げと、ほとんど全てを手作業で行います。作業工程の1つ「中縫い」は、「小間(コマ)」と呼ばれる三角形の生地を複数縫い合わせ、「カバー」と呼ばれる傘の上部を作り上げます。「感覚で縫っています。」と話す職人さんの手捌きは圧巻。わずかなヨレも許されないため、一瞬の作業の工程に経験に裏打ちされた職人の細かな手仕事が垣間見えます。
1本の傘が出来上がるまでに幾人もの職人が携わり、歴史に培われたアナログな織物技術とハイテクなコンピューターデザインを掛け合わせ、織り生地ならではの奥行きと質感が美しい柄を纏った商品に仕上がります。
自社ブランド『槇田商店』の展開。「西桂」の地域とともに次世代にバトンを繋ぐ
「槙田商店」は、長らく絹織物の生産から始まり他社ブランドからの受注生産を請け負っていましたが、「企業認知の拡大」と「自分達からもお客様に提案ができるように」と2010年にオリジナルブランド『槇田商店』の傘づくりを開始。海外からの注文やトップブランドとのコラボレーションも増える中で、ずっと変わらないのは西桂町の地域に根付いたモノづくりです。
「富士吉田地域で開かれている『ハタオリマチフェスティバル』等をきっかけに、郡内織物やテキスタイルなどに興味がある方が増えていますが、山梨県内の方でも『郡内織物』という名前は知っているけどよく分からないという方も多いと思うんです。私たちは、山梨県の伝統産業である郡内織物を次の世代にバトンを繋いでいくために、地元企業と連携し若い世代にモノづくりの面白さを伝える活動や、地域に住む主婦さんを雇用するなど、郡内織物の裾野を広げる活動を進めています。」と槇田社長は話します。
社屋に併設されたファクトリーショップでは、「槙田商店」の傘を実際に手に取ることができ、たくさんの職人の想いが込められた一生物の1本を見つけることができます。「ゆっくりと織物や傘の魅力にふれ、自分にぴったりな傘選びをしていただける、そんな場所を近い将来つくっていきたいです。」と未来を見据える槇田社長。
さまざまな色糸を織って色柄に立体感を出すジャカード織のように、たくさんの人と人が織りなすことで伝統を進化させながら継承し、次の150年も輝きが増す「槙田商店」にこれからも目が離せません。
Article written by VALEM co., ltd.
槙田商店
山梨県南都留郡西桂町小沼1717
※詳細は下記URLを参照してください。
https://shop.makita-1866.jp/
Instagram : makitashoten_1866