
シュールとは?〜「シュールだね」と言われたら?
身近な言葉、「シュール」。なんとなく使っているけど正確な意味はよく知らない、そんな方も多いのではないでしょうか?
ここでは、シュールの意味や語源、使い方を分かりやすく解説します。
シュールの意味は?
シュールの意味は、奇抜、個性的、非凡です。以下のシーンでシュールという言葉がよく使われます。
・奇抜な・個性的な見栄えや風景、表現
・平凡ではなく非凡な感じ。非日常的な発想
・現実離れしていて不思議な様子・奇妙な様子。滑稽
その様子や空気感を指す形容詞なので、映画や絵画、マンガ、お笑いなど幅広いシーンで使いやすい言葉です。
シュールの語源は?
シュールの語源はシュルレアリスム(surrealism)です。
フランスの作家アンドレ・ブルトンを中心に進められた芸術運動で、「超現実主義」とも呼ばれます。心理学者フロイトの精神分析や経済学者マルクスの思想に強い影響を受けて、人の意識的な部分ではなく無意識の部分をもっと追求して「人間の本質、全体性」の表出を目指そうとする試みでした。
その後シュルレアリスムは、ピカソやダリ、日本では岡本太郎や安部公房など芸術家に広く影響を与えました。設定が現実離れしているが、何度も触れたくなる、そこから受けとるものが決して少なくない・・・そう感じる作品があったなら、それはシュルレアリスムの系譜の上にあるかもしれません。
シュールリアリスムはファンタジーやSFといったジャンルではなく、表現方法の姿勢や精神を指し、映画、音楽、小説、彫刻、絵画、演劇、お笑いなど広く芸術活動に適応しうるものです。今もアメリカや日本のポップアートなど、若者の文化に影響を与えたと言われています。
日本に移入されたシュルレアリスムはやがて本来の意味を逸脱して「シュール」という形容詞を派生させ、これが「非日常的な発想」「奇抜な・個性的な様子・表現」という意味で使われるようになります。
ロックミュージックの1ジャンルだったEmo(イーモウ)からエモいという言葉が生まれたように、時を経て新しい言葉が派生することがあります。
シュールリアリスム運動が日本に入ったのは1930年ころ、美術評論でシュールという言葉が使われるようになったのは1950年代、そして若者の日常会話でシュールが使われるようになったのが2000年あたりからです。つまり「シュール」は20年以上も使われてきたことになります。
シュールの妙〜廃(すた)らない新興形容詞
実際にはシュールの意味はかなり曖昧で、突っ込みどころが多い、不思議な雰囲気があるときにも使われます。作品側・作者側が至って真剣なときには滑稽さが増すものですが、そんな場面でも好んで使われます。
非凡と言うには平凡側にいないといけません。シュールと発した時、相対的にこちらの位置が決まり、一歩引いた客観的な立場に落ち着く、ここにシュールの妙があります。
シュールという言葉には、相手をナンセンスと切り捨てる意図は希薄で、ネガティブな感情があまり含まれません。かといって、積極的にポジティブな共感を含むわけでもなく、どちらかというと中立的。自分には理解できないけどなにか芸術的な雰囲気がある、万人受けしなくても分かる人には分かるかもしれない、といったある種、敬意のようなニュアンスが込められています。
だからもしあたなが「シュールだね」と誰かに言われたら、それはあまり悪い意味で受けとらなくていいでしょう。個性やセンスを褒められたんだな、と軽く考えるのが賢明です。チャレンジ精神はそれだけで価値がありますから。
平凡の対義語は非凡ですが、非凡には「たぐいまれな才能」という意味があります。そこまでかは分からないけど、工夫があるよね、なにか面白いよね、と言いたいときにシュールという言葉が選ばれています。
そんな絶妙なニュアンスがあるから、「シュール」は20年以上も使われてきたのでしょうね。
シュールの具体例
ここで、シュールの具体的をいくつか挙げます。
「あの映画、伏線が全然回収されてなくて、それがシュールだった」
「彼の冗談はいつも意味分かんないけど、なんか笑っちゃう。シュール」
「あの家の出窓に、大きなぬいぐるみが外を見てるようにずっと置いてある。かなり日焼けもしてる。なんかシュール」
「リーゼントがフランスパンって・・・なんかシュール」
シュール感は古代から存在するかも?!
「古墳」や「ピラミッド」、「モアイ像」などの古代遺跡も文脈によってはシュールと言えそうです。
建造当時も人々の暮らしの風景の中で、奇抜で特異な造形として存在したはずですから、昔の人たちも現実的な風景との対比から感じる非現実感に、何か特別な意味を感じとっていたかもしれません。その感覚が、今使われるシュールという言葉の本質なのかもしれません。
私たちの生活は、用途がはっきりしたモノと意味がはっきりした言葉に囲まれていますが、だからこそ、用途のはっきりしないモノを意味のはっきりしない言葉で形容したいときもあります。そこに宿る神秘的で不条理な予感を余白として残そうとする言葉は、草の根の芸術のための新興形容詞でした。
以上、シュールの解説でした。これでこれからは自信を持って「シュール!」と言えるのでは?
written by ヒノキブンコ