ナミテントウ〜身近なテントウムシの面白い生態
春の気配を感じるにはまだ少し早いですが、春の象徴『ナミテントウ』を一足先にご紹介します。
身近なてんとう虫ですが、なかなか奥深い特徴を持っていました。
ナミテントウの生態
ナミテントウは、北海道、本州、四国、九州、沖縄など全国に分布し、公園、庭、川原、森などに生息します。『普通の』という意味で、『並(ナミ)』とつけられました。
ナミテントウ、背中の模様は並みじゃない
以下のてんとう虫のうち、ナミテントウはどれでしょう?
答えは『すべて』。
驚いた方もいるかもしれませんが、全部同じナミテントウなんです。なんと200以上もの違う模様(斑紋)が知られています。
なぜこんなにも多様なのか?それは長年不明でしたが、2018年に大きな発見がありました。
背中の模様は、さなぎの段階でメラニンという黒色色素とカロテノイドという赤色色素が一定のルールで沈着等を起こして形成されるのですが、それが1つの遺伝子によって制御されていることが分かったのです。
詳しくは、「テントウムシの多様な斑紋を決定する遺伝子の特定に成功」をご参考下さい。複雑に見える生命現象は意外にもシンプルな仕組みで成り立っているようです。とはいえ、それを見つけるのは大変なわけですが。
テントウムシの足の秘密
てんとう虫全体に共通する特徴でもありますが、ナミテントウはガラスの壁を滑ることなくすらすら歩けます。
それが足の先の剛毛部分(下の写真)によるものだということは分かっていましたが、どんな原理で接着できるのかはなかなか分からず、40年間専門家の間で議論されてきました。 しかしこれも2021年に分子間力(ファンデルワールス力)によるものだと判明。教科書で見た難しそうな法則を、てんとう虫は生活で使いこなしているなんて・・・
むろんガラスの壁は自然界にはありませんが、アブラムシを食べる習性ゆえ、つるつるした木の幹や枝葉をすらすら歩けるように足の裏が進化したのでしょうね。
海外で外来種として問題に
ナミテントウは海外では実は外来種として問題になっています。
たとえばアメリカでは、ナインスポッティドテントウという在来のテントウムシが減少し、ナミテントウなどの外来種が増えています。在来種が減った原因の一つに外来種の拡大が考えられています。
ただし、外来種が入ってくる前から在来のテントウムシが減り始めていたデータもあり、現象の理由はまだはっきり分かっていないようです。
ナミテントウとナナホシテントウの区別
ナミテントウによく似ている種にナナホシテントウがいますが、こちらは背中に黒い星が7個あるので簡単に区別できます。
公園で「これはナミテントウ」「こっちはナナホシテントウだよ」と教えてあげれば、いったいどうして分かるの⁉と褒めてもらえるかも!
以上、ナミテントウについてでした。
春先にいち早く動き出すテントウムシは地面の小さなお日様。
私たちの心を暖かくしてくれるナミテントウに、もうすぐ会えますね!
written by ヒノキブンコ