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クマは増えてる?ツキノワグマとヒグマの今。

クマ出没やクマによる被害のニュースが増えましたが、なぜクマは増えているの?そもそも、クマの捕獲頭数が増えているだけで山のクマの個体数は増えていないのでは?

そんな議論もありますが、この記事ではツキノワグマとヒグマの今をデータでご紹介します。

ツキノワグマとヒグマ〜日本には2種類の熊が生息

日本には2種類の熊が生息しています。ツキノワグマとヒグマ(エゾヒグマ)です。

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■ツキノワグマ
本州、四国に⽣息。
四国では30頭以下?
九州では絶滅した。
全国での⽣息個体数ははっきり分かっていない(10,000頭前後とも26,000頭とも)。

■ヒグマ(エゾヒグマ)
北海道に生息。
2020年度の推定個体数は11,700頭前後?

クマの分布域は全国的に拡大

「クマ類の生息状況、被害状況等について」(環境省)によると、1990年頃から四国を除いた地域でクマの分布域が拡大しています。

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出典:「クマ類の生息状況、被害状況等について」(環境省)

青森県北部、福島県阿武隈山地、富山県西部、長野県全域、中国山地で分布域の拡大が顕著。鳥取県では昔は東西に生息域が限られていたのが、現在は全域に拡大しています。

分布域の拡大は北海道(ヒグマ)でも顕著です。

それに伴い、クマの捕獲頭数も増えています。こちらは1923年から2012年までのツキノワグマの捕獲数の推移です。

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出典:クマ類の保護及び管理に関する現状(環境省)

以下は、2008年から2023年までのツキノワグマとヒグマの捕獲数です。

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出典:ツキノワグマとヒグマの捕獲数(環境省データ「クマ類の捕獲数(許可捕獲数)について(速報値)」を元に作成)

本州の多くの地域でクマの推定個体数が増加

「クマの捕獲頭数が増えているだけで、山のクマの個体数は増えていないのでは?」

そんな議論もあります。たしかに捕獲頭数だけで個体数の増減を論じることはできません。

しかし、都道府県の推定個体数のデータを見れば、やはり全国的に増加傾向と言えそうです。

山域の全個体数を調べるのは困難なので、以下の方法で部分的なデータを得てから、階層ベイズ法などの統計手法で推定個体数を算出します。
・直接観察法:見通しのよい場所で双眼鏡などで一定の頻度で観察を行い、個体数を直接数える
・ヘアトラップ法:バラ線などを設置し、採取されたクマの体毛のDNAで個体識別して個体数を調べる
・カメラトラップ法:カメラなどを設けてクマの個体別に通過率を調べる
・標識再捕獲法:以前捕獲したクマに標識を付け、その再捕獲率を調べる

各都道府県ごとに地理条件が違うのでデータ収集方法も異なりますが、同じ方法(複数の方法もあり)で違う時期を比べることで増減傾向が推測できます。

このようにして求めたデータから、日本全体で個体数は増加傾向と言えるそうです。

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平成24〜28年度と平成29〜2年度の比較
出典:環境省「クマ類の生息環境、および被害状況について」

クマによる人身被害について

クマの分布の拡大、個体数の増加に伴い、人の被害も全国で増加傾向です。とくに2023年は、東北などでブナの実が不作だったため、増えたクマが冬眠前の餌を求めて人里に降りてきて人身被害が増加したと考えられています。

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出典:全国のクマによる人身被害人数について(環境省データを元に作成)

山梨県内のクマによる人身被害の状況は以下です。

・2024年度(暫定値):1件(7月)
・2023年度:2件(10月、11月)
・2022年度:1件(6月)
・2021年度:1件(12月)
・2020年度:4件(9月(2件)、10月、11月)
・2019年度:2件(5月、10月)
・2018年度:2件(7月、8月)

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クマとの共存が課題

生態系の頂点に立つ動物は、強そうに見えて、いつでも危うい存在です。環境変化や人為的な介入で、いとも簡単に個体数を減らしてしまうのです。

九州では1957年を最後に(九州個体の)ツキノワグマが見つかった記録はなく、2012年に環境省により絶滅宣言が出されました。四国でも一部の山域でしか見られず、2036年に絶滅する確率が62%と試算する研究もあります。

ニホンオオカミは明治時代に絶滅しましたが、クマにも同じ道をたどらせるわけにはいきません。

昔は狩猟圧により適正な個体数が維持されていたと言います。人間の生活圏とクマの生息圏の間の「へだたり」を作っていくことが共存策の一つですが、それには持続的な担い手と財源が必要。地域の過疎化、高齢化、耕作放棄地、少子化など、日本の地域が抱える課題がクマ問題として表出しているなら、これは市町村だけで解決できる問題ではなさそうです。

クマ問題は、日本の地域をどうしていくか、そのビジョンを私たちに問うています。

クマに出会わないために。クマに出会ってしまったら

地方では、お散歩や畑仕事でクマに出会う可能性があります。クマ対策は非常用食料や災害避難場所と同じく家庭に求められる防災知識と言えます。

クマ対策についてはこちらをご覧下さい。

▼クマに注意〜思わぬ事故を避けよう(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/kids/full.pdf
子ども向けに分かりやすくまとめられています。

▼急増するクマ被害 遭遇したらどうする?出会わないために何をすべき?
https://www.nhk.or.jp/bousai/articles/31606/#mokuji04

▼豊かな森の生活者 クマと共存するために(平成28年)
https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5/docs5-kuma.pdf
5ページ目に「クマに出会わないために」「クマに出会ったときの対処」が詳しく書いてあります。

Article written by ヒノキブンコ

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