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燃料電池って?FCVや水素社会を解説〜世界が注目!山梨のP2G

燃料電池で走る車やバスを街で見かけるようになりました。カーボンニュートラルな水素社会の実現にはまだ課題も多いですが、実は山梨県は世界的に注目される実証実験を進めています。やまなしモデルP2Gです!

燃料電池とは?

燃料電池(Fuel Cell、FC)は、水素と酸素を化学反応させて電気を直接取り出す発電装置です。

理科の授業で、水に電気を流して水素と酸素を発生させる実験をした経験はありませんか?燃料電池はちょうどその逆の反応になります。

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FCV(燃料電池自動車)とは?

そんな燃料電池を積んだ自動車、バスなどを、FCV(Fuel Cell Vehicle、燃料電池自動車)と呼びます。

その場で作った電気で走る新しい乗り物です。電車や家庭用家電、給湯システム、船舶、フォークリフト、自転車、ロボットにもすでに実用化されています。

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山梨中央銀行でもFCVが運用されています

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すでに運用されている燃料電池で走るFCVのバス

燃料電池やFCVのメリット

燃料電池やFCVにはいくつかメリットがあります。

排出されるのが水だけ

燃料電池は水しか排出されません。石油や天然ガスを燃料や発電に使うと排出されるCO2などの温室効果ガスは、燃料電池では一切排出されないので、次世代エネルギーとして注目されています。

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発電効率が高い

燃料電池は、火力発電のようにエネルギー変換過程で熱変換や機械変換を経由せずに、直接電子を取り出して電気を得るので、発電効率が高いのが特徴です。水素と酸素の化学反応時に熱が発生しますが、ここに銅管などを通せば熱エネルギーとして給湯などに活かせます。

リチウム電池に比べて蓄電量が多い

水素燃料電池は現行のリチウムイオン電池よりも蓄電量が多いとされます。ドローンに水素燃料電池を使えば、飛行時間が4倍になるとの試算もあります。*

*「水素エネ普及へPT 甲府市など技術者、研究者を育成」2024年6月25日付け読売新聞

正確には燃料電池は電池(バッテリー)ではなく内燃機関(エンジンなど)です。そのため、一定時間充電が必要となる電気自動車とは異なり、ガソリンのように補給すればすぐに動き出すのもメリットです。

静か

タービンやエンジンなどの動力機関はなく、静かに化学反応が進行するので、騒音が起こりません

燃料電池やFCVのデメリット、課題

一方、現状の燃料電池やFCVには以下のデメリットや課題があります。

水素の価格

水素の値段が高いことがデメリットの一つです。

FCVは燃費は決して悪くありませんが、水素をエネルギー源として使うため、比較的安価な家庭用電気を使う電気自動車と比べて、水素の流通価格に左右されやすい面があります。

その水素の価格はまだ高価な上、世界的インフレなどの影響で昨今、流通水素の価格が上昇しています。

安価な水素の安定供給、低コストな水素製造は水素社会実現の鍵であり、政府はその政策を進めています。

FCVの車両や家庭用燃料電池の値段が高い

燃料電池本体やFCV本体の価格が高いこともデメリットのひとつです。

SDGsを掲げる自治体や国は地球温暖化対策の一環として、FCV導入の補助を始めています。たとえば山梨県では、個人や県内に事業所を持つ事業者がFCVを購入する場合、1台につき130〜230万円程度の補助が受けられます(2024年6月確認)。

水素供給インフラ

FCVが普及するには、燃料の供給元となる水素ステーションのインフラ整備が必要です。今は水素ステーションの数が少ないので、遠出の際に水素欠(燃料不足)の不安を感じるFCV所有者も多いようです。

政府は、一般道や高速道路のサービスエリアなどに2030年度までに水素ステーションを1,000箇所に増やす目標を掲げて整備を進めているところです。

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水素の種類にはグレー水素、ブルー水素、グリーン水素、ホワイト水素がある

燃料電池に使われる水素は、その生成過程で温室効果ガスが排出されるかどうかの観点から、3つの色で呼び分けられています。


石炭や天然ガスなど化石燃料を燃焼して発生するガスから回収される『グレー水素(CO2を大気に排出する)』、『ブルー水素(CO2は回収し、大気に排出しない)』、再生可能エネルギー由来の電気で作った『グリーン水素』です。

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出典:資源エネルギー庁ウェブサイト「次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?」


最近は新しい色も出ました。ホワイト水素です。これは天然水素、すなわち自然界中に局所的に存在する水素を採掘して得る水素です。火成岩(玄武岩、花崗岩など)が地下水と化学反応して生成された水素がそのまま地下に貯蔵されたもので、あまりコストをかけることなく得ることが可能なので、最近注目されています。ただ、資源である以上、埋蔵量が限られている可能性があり、ホワイト水素はサステナブルな選択とは言えないかもしれません。

実は、現在世界の燃料電池に使われる水素の多くはグレー水素です。そのため、燃料電池自体は環境に優しくても、その燃料を作るときにCO2が排出されているという状況です。

グリーン水素はグレー水素やブルー水素に比べ、3、4倍のコストがかかると試算されることもあります。そのため、いかにグリーン水素を低コストで製造し社会に流通させるかが鍵です。この難問に世界の研究機関や企業が取り組んでいるわけですが、注目されているのが山梨県で進められているP2Gです。

やまなしモデルP2G事業とは?グリーン水素を地域利用

山梨県は全国に先駆けてグリーン水素社会の実証試験を行うトップランナーです。

もともと山梨県は東京電力と共同で平成24年に大規模な太陽光発電所(米倉山)の運転を開始し、長年大規模な太陽光発電と電力供給を行ってきました。山梨県は日照時間が長いこともあり、日によってはどうしても余剰電力が出てしまうことも。電気は水のように貯めることが難しいのですが、水素なら長期間貯蔵できる。そんな着想から生まれたのが、やまなしモデルP2G(Power to Gas)事業*です。

*CO2フリーの水素エネルギー社会実現に向けたP2Gシステムの技術開発及び実証研究

P2Gとは本来、再生可能エネルギーの余剰電力でガス(水素に限らない)を生成・貯蔵し、周辺地域へ供給するシステムを指します。山梨のケースでは、太陽光発電で得たエネルギーで水素を生成する、ということになります。

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出典:Power to Gas(P2G)システム、山梨県HP


この事業のポイントは、水素製造から貯蔵・運搬、工場・地域での利用まで含めた実証実験を進めている点です。

現在は、国内最大となる16メガワットのP2Gシステム(水電解システム)を山梨県北杜市白州に建設中です。地域で作られる再生可能エネルギーを集めて、このシステムでグリーン水素を製造し、企業の工場が使う熱エネルギーの代替としたり、周辺地域に燃料として供給するものです。2025年稼働予定です。

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サントリー天然水 南アルプス白州工場およびサントリー白州蒸溜所における 「やまなしモデルP2Gシステム」のイメージ
(出典:サントリーHPより許可を得て転載)


やまなしモデルP2Gシステムの性能が証明され、効率性についてのデータが得られれば、グリーン水素社会の実現への大きな一歩となるため、この事業の行方に世界が注目しています。




以上、『燃料電池って?FCVや水素社会』についてでした。水素社会実現に向けた最先端の研究が山梨県で行われていることは誇らしいことですね!

written by ヒノキブンコ

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