子どもの貧困について
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日本は豊かな国と思われていますが、実は子どもの貧困が深刻です。
2018年の日本の子どもの貧困率は13.5%*。17歳以下の子どもたちの7~8人に1人(約260万人)が、『貧困状態』にあります。『貧困状態』とは貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)である127万円に満たない生活状態であることを意味します。
1997年以降、日本の子どもの貧困率は13~16%台で推移し、これは先進7カ国(G7)の中でも高い水準です。
ここでは、子どもの貧困問題の現状とその社会的背景をご紹介します。
*2019年国民生活基礎調査(厚生労働省)
『子どもの貧困』の背景
近年日本での離婚率は急速に上昇しており、ひとり親世帯が増えています。子どもの貧困はとくにこのひとり親世帯で起こりやすく、父子世帯よりも6倍多い母子世帯(シングルマザー)においては、その労働条件が原因で子どもの貧困が起こりやすいと言われています。
家計を支えるためには安定したゆとりある収入が必要ですが、母子世帯の場合、正規雇用に就きづらくパートやアルバイトなどの非正規雇用では十分な収入が得られずに貧困線を下回るケースが多いようです。もともと正規雇用で働いていても、出産を機にパートや非正規雇用になるケースもあります。
その状況を裏付けるように、「児童のいる世帯」(18歳未満の子どもがいるすべての世帯)と、そのうちの母子世帯の貯蓄について、以下のような調査結果が出ています。
*2019年国民生活基礎調査(厚生労働省)
母子世帯の場合、貯蓄がないと答えた世帯が65%に上り、さらに平均貯蓄額も児童のいる世帯よりも大幅に少ないことが分かります。
貧困の要因はさまざまですが、その根底には離婚によるひとり親世帯(とくに母子世帯)の貧困を想定していない日本の労働環境があるようです。
さらに問題として挙げられるのが、『働いているのに貧困から脱せない』という日本特有の状況です。
働いても貧困から抜け出せない⁉
経済協力開発機構(OECD)による14年版「世界のひとり親世帯の相対的貧困率」ランキングでは、日本は母親の就労率が世界的に高いにもかかわらず、ひとり親世帯の貧困率が50.8%とOECD加盟国33カ国中ワースト1です。
つまりわが国では、ひとり親世帯(とくに母子世帯)が頼りにしやすい「非正規雇用」や「パート雇用」という雇用形態が、家計を成り立たせるのに十分な収入を担保しない場合が多く、そのため、ひとり親世帯の親は働いても働いても貧困から抜け出しづらいという状況が起こっているのです。これは世界的にも特異な状況で、今の日本の非正規雇用のあり方が問われています。
出典:内閣府ホームページ
(https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26honpen/b1_03_03.html)
コロナで追い打ち
さらに、新型コロナの影響はひとり親世帯の家計に追い打ちをかけています。 ある調査では、ひとり親世帯の7割以上がコロナの影響で収入が減っていることが分かりました。
緊急事態宣言の発令や勤め先の飲食店の経営悪化などで労働時間が減り、収入が大きく減少してしまい、家賃などを貯金から切り崩したり、先の見えない暮らしに心身ともにストレスを抱えるひとり親世帯も増えているようです。
ひとり親世帯を支援する制度の一部
ひとり親世帯を支援する制度の一部をご紹介します。ほかにも支援制度がありますので、お住まいの自治体に相談されるといいでしょう。
ひとり親世帯の方への就業支援(内閣府)
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/ouen/employment/single/
ひとり親世帯の方への就業支援に関する制度を紹介するページです。自立の支援や就職のための資格取得支援、在宅就業支援など、ひとり親世帯への就業支援が総合的にまとめられています。
児童扶養手当
https://www.city.kofu.yamanashi.jp/jidoikuse/kenko/kosodate/hitori/jido.html(甲府市)
児童手当
https://www.city.kofu.yamanashi.jp/jidoikuse/kenko/kosodate/teate/jido.html(甲府市)
医療費助成制度
https://www.city.kofu.yamanashi.jp/jidoikuse/kenko/kosodate/hitori/iryo.html(甲府市)
子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/ikuji-kaigo01/
子どもの預かりや保育園の送迎など働く親が助かるサービスの利用料が、ひとり親世帯の場合、援助される場合があります(自治体によります)。
フードバンクなど民間支援
https://fbyamana.fbmatch.net(フードバンク山梨)
無料で食料を届けるセーフティネットが全国にあります。たとえば「フードバンク 希望 ○○市」などと検索すると相談窓口が分かります。
「こども食堂」ネットワーク
http://kodomoshokudou-network.com
おいしいご飯を低料金で、みんなで食べることができます。親が仕事のため、子どもにお弁当を買いに行かせないといけない、子どもにひとりでご飯を食べさせないといけない、という不安が解消できます。HPのトップページのマップにて、お住まいの近くにこども食堂があるか検索できます。
ひとり親世帯等日常生活支援事業
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000098023.html(厚生労働省)
母子世帯、父子世帯などで、一時的に生活援助・保育サービスが必要な場合など、家庭生活支援員の派遣を受けられる場合があります。
以上、子どもの貧困、その現状と原因についてでした。
Written by ヒノキブンコ