モモハナ Vol.1(Introduction of MOMOHANA)
山梨県大月市には古くから「桃太郎伝説」が民間伝承として語り継がれています。桃太郎に関連した地名も多く残されており、日本三大奇橋である「猿橋」もそのひとつ。そんな地元のストーリーをあらためて見直し、地域の魅力発信に活用したのがモモハナを運営する竜沢華林(たつざわかりん)さん。山梨県立大学総合政策学部に在学しながら、自ら事業を立ち上げました。地方都市の魅力発信を掲げる、竜沢華林さんと「モモハナ」の挑戦とは。本人にお話を聞きました。
自分にしかできないことを実現するために「モモハナ」を起業
―竜沢さんは学生で起業したってことなんですけどそのきっかけというか、理由はなんだったんですか?
もともと山梨を元気にしたいっていう思いがありました。起業自体が目的ではなくて、起業しないとできないことがあるから起業した。という感じですね。わたしは山梨の地域振興に携わりたかったから県立大学を選びました。山梨が好きなんですよ。
―県立大学は地域振興に積極的な学校というイメージがあります。
そうなんです。地域に関わるサークル活動をしたり、地域振興にガッツリたずさわれるのですが、活動するうちに、「今やっていることは自分じゃなくてもできるな」と考えるようになって。地域の活性化に関してはすでにプレイヤーがたくさんいて、大学生よりもすごいことしてる人たちがいる。じゃあ自分にしかできない地域振興のかたちってなんだろうって。いろいろ考えていたところ、おばあちゃんの実家に関連して面白いものを見つけたんです。
―それがこの、モモハナ(竜沢さんが個人事業主となっている)の「桃太郎もち」だったわけですね。
はい。今はもうないんですが、祖母の家が桂川館(けいせんかん)という旅館を大月市で営んでいて、そこでこの「桃太郎もち」を大正時代に販売していたそうなんです。現存しているものはプレミアが付いてるみたいなんですよね。桃太郎に関連した商品でもっとも古いアイテムということで、オークションで何万円もするっていう。すごく面白いなと思って。
「桃太郎伝説」を題材に魅力を発信
―山梨県の大月市には桃太郎伝説が残っていて、モデルになった土地として有力視されていますよね。
だけど、大月は桃太郎に関して特に推したりとか何もしてない状況だったんです。一部の地域では民間伝承として根づいているけど、観光の材料にはしていない。だからなんとかできないかなと。これだったらわたししかできないことかもしれない。って思いました。血筋にルーツがあることでストーリーとしても説得力があるし。
―「これだ」ってものを見つけたと。
「桃太郎もち」をまず復刻して、事業展開しようと考えました。
―オリジナルの「桃太郎もち」はおばあちゃんの「桂川館」で自社製造していたってことですか?
製造は、地元の近くの生菓屋さんがしていたみたいです。販売は全部「桂川館」でおこなっていたようで、今風に言うと、プロデュースをてがけていたかたちですね。
―それでこの現代版「桃太郎もち」はどのように復刻したんでしょう?
「桂川館」が一度、桂川沿いから大月駅前に移転していて、「桃太郎もち」の資料とかその時に全部捨てちゃったみたいなんですよね。
―ヤバイじゃないですか。いきなり迷宮入り案件(笑)
もう、諦めて新しくつくっちゃおうって(笑)なので厳密にいうと復刻というか完全リニューアルですね。いろいろ考えたんですけど。パッケージデザインも当時のレトロなものにして、中身も昔ながらの味にしようかと当初は考えていました。でも、せっかくつくるんだから、わたしにしかつくれないものをつくろうと。そこで現代的な要素を取り入れることにしたんです。最初に考えていたレシピは全部無視して(笑)わたしと同じ年代のコたちが買いたくなるものにしようと決めましたね。
―当初の目的に固執することなく、思い切って方向転換する決断力が素晴らしいですね。で、新しい「桃太郎もち」はどのような仕上がりになったんでしょうか。
「食べて可愛い、見て可愛い」を目指しました。インスタグラムとかSNSにも載せたくなるようなものにしたかったんですね。おもちの中に白あんを入れて、さらにあんのなかに桃の果肉を練り上げてあるんです。もちもちの食感に桃の風味が感じられるお餅になりました。袋を開けるとすごく香りもいいんです。
―見た目も桃みたいで可愛いですね。確かにインスタ映えしそう。
オリジナルの存在は何も考えずにつくって、完成してから当時の桃太郎もちを知っている方に、見た目が似ていると言われたのは驚きました。
レトロな雰囲気を保ちつつ、同世代の女の子ウケを最優先
―パッケージも可愛いです。
大月市にある「猿橋」と、百蔵山と岩殿山を入れて、桂川館のロゴ、桃太郎の一行を配置して、大月に伝わる「桃太郎伝説」のストーリーを感じてもらえるようなデザインにしてもらいました。普通お土産のパッケージって派手じゃないですか。だけど、お土産屋さんに並べられたときに目立つよう、あえてカラーリングはモノクロにして目を惹くようにしたんです。
―なるほど。逆転の発想ですね。この「桂川館」のロゴは熊なんですね。
「桂川館」をやっていたおじいちゃんの名前が「熊治郎(くまじろう)」なんですよ。実際旅館でもところどころに熊のモチーフが使われていて、トレードマークが熊だったそうなので新しく作って、使いました。パッケージデザインはいくつか案があったんですけど、実際に同年代のコたちにアンケートをとって人気だったのが、このデザインなんです。
―これを製造しているお菓子屋さんも山梨なんですか?
できるだけ山梨の企業と一緒にやりたかったので、甲府市にある「海老屋」さんというお菓子屋さんと一緒につくっています。こちらのお店ではアイスをよく作っていて、桃太郎シリーズのアイスもつくってもらってるんです。
―「桃太郎もち」にはじまって、ほかには、いくつ商品展開があるんでしょうか。
今、たしか7種類くらいあります。いろいろな山梨の企業の方と連携して。イチから開発したり、パッケージだけプロデュースさせていただくパターンもあります。次につくる商品もすでに決まっています。
―すごいですね。じゃあ今、いろんなところで「モモハナ」の商品が売られているんですね。
販売店だけじゃなくて桃太郎関連のイベントにも声をかけていただけるようになりました。お店だと「猿橋」の前にある売店にふたつ。大月駅前のお店がひとつ。甲府だと県庁防災新館に入っている「まるごと山梨館」で取り扱ってもらっています。あとはサービスエリアですね。釈迦堂、初狩、境川、谷村の4ヵ所です。
―中央道の通り道で買えるのは、いいですね。
大月方面に基本的には限定しているんです。どこでもホイホイ買えてしまうと、ご当地のプレミア感がなくなってしまうので。
Article written by VALEM co., ltd.
本稿でご紹介している竜沢華林さんは、公益財団法人山梨中銀地方創生基金の「平成29年度 第1回起業・創業に対する助成」 において、助成先として選出されました。
公益財団法人山梨中銀地方創生基金は、地方創生に関わる 企業・団体・個人等の地域創成の画期的なビジネスモデルに対し助成を通じて、山梨県の地域社会の繁栄と地域経済の活性化に取り組んでいます。
【山梨中銀地方創生基金ホームページ】
https://www.yamanashi-chihousousei.or.jp/
モモハナ 代表 竜沢華林
山梨県立大学総合政策学部総合政策学科所属。地域振興に携わり、在学中にプロデュース事業「モモハナ」を起業。山梨県大月市に伝わる「桃太郎伝説」をモチーフに、現代風にアレンジ。地域の魅力を発信する商品開発と販売をおこなう。今後も山梨の魅力発信に関わる事業を展開していく。
※「モモハナ」詳細や最新情報は下記URLを参照してください。
モモハナfacebook ページ
https://www.facebook.com/momohana2017/