アカマダラハナムグリ〜⼭梨で希少、東京都区内で絶滅
今回は山梨に生息する、とある甲虫をご紹介。その名は、アカマダラハナムグリ(別名、アカマダラコガネ)。
こんな姿です。
オレンジ色の体に黒いまだら模様。虫好きな方なら、この模様がかなり斬新であることが分かると思います。
実はこのコガネムシ、長らく生態も不明で「幻のコガネムシ」とも呼ばれてきました。過去数例の発見例しかなく、見つかるとニュースになります。
繁殖場所が分かってきたのもつい最近。一風変わった場所で幼虫が育つことが明らかになりました。
それはなんと鳥の巣の中。オオタカやクマタカ、カワウなど、大きめの鳥の巣の中で本種の幼虫が育つことが分かりました。鳥の巣は長年使用されると、草やフン、餌の残骸などが堆積して腐食層ができます。そこで幼虫が育つのです。ある調査では、一つの鳥の巣から300近く本種の幼虫や繭(まゆ)が見つかったと言われています。
どうやら、背中にまとう「アカマダラ」は巣材への擬態と無関係ではなさそうです。捕食者である鳥と共生するとはなんとも大胆ですが、巣の腐食層で営まれる食物連鎖に甲虫が居場所を見つけることは自然の摂理とも言えます。
ハナムグリの仲間であることが分かったのも最近です。正式名がアカマダラハナムグリに変更されるまでは、アカマダラコガネと呼ばれていました。その呼び方の方がしっくりくるのか、今でも図鑑などでアカマダラコガネと紹介されることが多いようです。
アカマダラハナムグリは50年前には日本各地でよく見られましたが、今はレアな存在になりました。このマップを見てください。
これは「日本のレッドデータ検索システム」(NPO法人野生生物調査協会・NPO法人EnVision環境保護事務所)というサイトが公開しているマップです。都道府県ごとのレッドデータベースの指定状況がひと目で分かります。
レッドデータベースとは、絶滅が危惧される種を環境省や都道府県が調査、公開しているリストのことです。
このマップはアカマダラコガネの指定状況を示しているわけですが、絶滅危惧Ⅰ類(絶滅が逼迫している)や絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が高まっている)に指定されている地域が多く、東京都(23区)ではすでに「絶滅」指定されています。
個体数が減ったのは、猛禽類の巣が減少したからと言われています。オオタカのご紹介記事では、オオタカが都市部などで最近増えていることをお伝えしたところですが、それが追い風になってアカマダラコガネも増加に転じるでしょうか。
山梨でも滅多に見れることはありませんが、山沿いの地域で、オオムラサキやクワガタに混ざって、クヌギやナラの樹液を吸っている姿がまれに見かけられます。
一度失われた自然はすぐに元には戻りません。今となっては希少になった種がふたたび普通種になることは、成熟社会のひとつの指標になっていくかもしれませんね。
written by ヒノキブンコ