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絶滅危惧種の鳥、昆虫、植物〜色鮮やかな虫から宝石のような花まで

国内だけで3,500種以上が指定されている絶滅危惧種。ここではその一部をご紹介します。ニホンオオカミやニホンカワウソのように絶滅してしまえば、後世の人たちはデータか剥製でしか見ることができませんが、今はまだ生きた姿を目にすることができる生き物たちです。

絶滅危惧種の定義とは

絶滅危惧種とは「絶滅のおそれのある種」のことで、レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)に記載されている種を指します。レッドリストは一つではなく、国際的なレッドリスト(国際自然保護連合、IUCN)、環境省のレッドリスト、都道府県のレッドリストがありますが、そのどれかに載っていれば紛れもなく絶滅危惧種です。

 ここでは主に環境省レッドリスト2020年度版や各都道府県のレッドリストに掲載されている絶滅危惧種をご紹介します。 

この記事の目次

コジュリン

コジュリン
コジュリン
コジュリンはVU
コジュリンは絶滅危惧種Ⅱ類

コジュリンは環境省レッドリスト2020版で『絶滅危惧種Ⅱ類(VU)』に指定されている野鳥で、本州の中部地方より北の地域に生息します(一部、熊本県も)。開発などで生息地が減り個体数が減少していると言われていますが、生息状況はあまり把握されていません。里山、草原、河川沿いのアシ原、海岸近くの草地などで暮らし、草や植物の種子や果実、昆虫を食べます。メスは褐色の地味な鳥ですが、オスは夏にまるで黒頭巾をかぶったように頭や喉が真っ黒になります。

ハヤブサ

ハヤブサ
ハヤブサ(山梨県甲府市)
ハヤブサはVU
ハヤブサは絶滅危惧種Ⅱ類

ハヤブサというと聞き慣れた身近な鳥と感じるかもしれませんが、レッドリスト2020版では『絶滅危惧種Ⅱ類(VU)』に指定されています。高度経済成長期に生息数が減少しましたが、最近は都市部での観察例も報告され、個体数は回復している地域もあるようです。ちなみに、ハヤブサはハトやヒヨドリなどの獲物を襲うとき翼をすぼめて急降下しますが、そのときの速さは時速300km以上、生物の移動速度としては世界最速です。

写真提供:smallzoo

ヤンバルクイナ

ヤンバルクイナ
ヤンバルクイナ
ヤンバルクイナは絶滅危惧種
ヤンバルクイナは絶滅危惧IA類(CR)

小学校の授業でも取り上げられることがあるヤンバルクイナは国の天然記念物で、沖縄本島北部の山原(やんばる)の森に生息します。1981年に新種として発見され、現地では昔からヤマドゥイ(山の鳥)、アガチャ(慌てん坊)などと呼ばれていました。ほとんど飛ぶことができないため、人為的に移入されたネコやマングースによる捕食が個体数減少の主因とされています。「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(通称「種の保存法」)で『国内希少野生動植物種』に指定されているため、捕獲などが禁止されます(ライチョウ、ハヤブサなども同じ)。

オオルリシジミ

オオルリシジミオオルリシジミ
オオルリシジミ
オオルリシジミ九州亜種は絶滅危惧IB類(EN)
オオルリシジミ
オオルリシジミ本州亜種は絶滅危惧IA類(CR)

オオルリシジミはシジミチョウの一種で、九州亜種と本州亜種の2タイプが生息します。九州亜種は九重や阿蘇の高原に、本州亜種は長野県(安曇野市、飯山市、東御市)、新潟県の山地での生息が確認されています。かつて東北地方や本州などに広く分布しましたが、多くの地域ですでに絶滅しました。生息地とされていた群馬でも現在は消滅してしまった可能性が高いと言われています。

ヒメヒカゲ

ヒメヒカゲ
ヒメヒカゲ
ヒメヒカゲ
本州中部・近畿・中国地方亜種は絶滅危惧IB類(EN)
ヒメヒカゲ
長野県・群馬県亜種は絶滅危惧IA類(CR)

オオルリシジミより一回り小さいジャノメチョウの一種で、本州中部以西、近畿、中国地方での生息が報告されています。丘陵地脇など山裾から冷たい水がにじみ出た湿地や湿原、斜面の湿った草地、高原の乾性草地が生息場所です。そのような環境は開発などで減少したため各地でヒメヒカゲは絶滅、現在は生息地が分断された状態です。

ルリモンハナバチ

ルリモンハナバチ
ルリモンハナバチ(山梨県北杜市)

マットな青緑色の毛が不思議な縞模様を描くミツバチ科のハチです。いわゆる寄生バチですが、具体的な宿主や幼虫の生育過程はまだ詳しく分かっていません。 生息地は本州〜九州までと広範ですが、ほとんど見かけることはないようです。個体数もあまり把握されておらず、環境省レッドリスト2020ではDD(情報不足)として掲載されています。京都では1970年代に発見されたきり2013年まで発見されず『絶滅危惧II類』に指定されています。他の多くの都道府県でも、絶滅危惧I類、II類、準絶滅危惧種に指定されています。

写真提供:smallzoo

トモンハナバチ

トモンハナバチ
トモンハナバチ(山梨県北杜市)

トモンハナバチはハキリバチ科のハチで、腹部にかけての、対をなす黄色の10個の紋(十紋、トモン)が特徴的です。トモンは左右でつながらずに中間で途切れ、その途切れ幅もお尻の先に向かうほど狭くなるV字の型。まるでデザイナーが考案したような、均整のとれた模様です。トモンハナバチは環境省レッドリストには掲載されていませんが、宮城県のレッドリストでは『絶滅危惧Ⅰ種』、茨城県、栃木県、群馬県では『絶滅危惧Ⅱ種』に指定されています。東京など都市部では絶滅に近い状態かもしれません。

写真提供:smallzoo

ゲンゴロウ

ゲンゴロウ
ゲンゴロウ

昆虫ファンもほとんど見たことがない野生のゲンゴロウ。ナミゲンゴロウ(一般的にゲンゴロウの名で呼ばれる、緑色で大型の種)は『絶滅危惧II類 (VU)』に指定されています。その他にもなんと20種以上のゲンゴロウが環境省レッドリストの絶滅危惧種(絶滅危惧ⅠA類、絶滅危惧ⅠB類、絶滅危惧Ⅱ類)に掲載されています。さらに、すでに絶滅したゲンゴロウも!(スジゲンゴロウ)

ゲンゴロウは絶滅危惧種
環境省レッドリスト2020の絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来絶滅する可能性が極めて高い)に掲載されたゲンゴロウ科の部分

ニホンウナギ

ニホンウナギ
ニホンウナギ
ニホンウナギは絶滅危惧種
ニホンウナギは絶滅危惧IB類(EN)

江戸時代から鰻丼として親しまれてきたニホンウナギですが、日本では2009年ごろから稚魚であるシラスウナギが減り、2013年の環境省レッドリストにて『絶滅危惧IB類』へ格上げされました。2014年には国際自然保護連合(IUCN)のレッドリットでも絶滅危惧種に掲載されました。これでウナギが食べられなくなるかと思うかもしれませんが、実は環境省レッドリストやIUCNのレッドリストには法的規制などの強制力はないので、獲ることや食べることは制限されません。もっと個体数が減り「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(通称「種の保存法」)で国内希少野生動植物種に指定された場合は捕獲などが禁止されます。いずれにせよ、日本独自の食文化を守るためにもニホンウナギの保全が求められています。

キタダケソウ

キタダケソウ
キタダケソウ
キタダケソウはVU
キタダケソウは絶滅危惧種Ⅱ類

キタダケソウはキンポウゲ科の多年草で、南アルプスの北岳山頂近くにだけ自生します。6月下旬から7月上旬の梅雨時に花が咲き、それを見たくて北岳に登る登山者も多いようです。かつては園芸用に盗掘されて個体数が減少しましたが、現在は生育地保護区を設置したり、開花時期にパトロールを行うなどの保全が進められています。種の保存法で『特定第一種国内希少野生動植物種』に指定され、採集は禁止されています。キタダケソウのようにその山にしか自生しない花は他にも、岩手県早池峰山のハヤチネウスユキソウがあります。

タカネマンテマ

タカネマンテマ
タカネマンテマ
タカネマンテマは絶滅危惧種
タカネマンテマは絶滅危惧IA類(CR)

タカネマンテマは国内では南アルプスのごく限られた場所にだけ自生するハデシコ科の植物です。約1万年前まで続いた氷河期には日本に広く分布していたそうですが、氷河期の終わりとともに姿を消していき現在は標高の高い南アルプスにだけ生き残ることとなった、いわゆる「氷河遺存種」です。盗掘で個体数が減少、環境省レッドリスト2007で絶滅危惧ⅠA類に格上げされました。絶滅危惧IA類はヤンバルクイナも属す最高レベルの絶滅危惧種のカテゴリーですが、近い将来絶滅する可能性が極めて高い生物が、ここ山梨の山地にひっそりと生息していました。

以上、日本の絶滅危惧種のご紹介でした。 レッドリストの鳥や虫の多くが人間活動により絶滅の危機に瀕しましたが、それは人にとっての「効率」が彼らを追い込んだのかもしれません。「効率」を追求する社会はこれからも続くので、絶滅危惧種が絶滅していくのはただの時間の問題であるようです。

Article written by ヒノキブンコ

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