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FSCとは?〜国内の森のこと。海外の森林破壊のこと。~

山梨県有林

実は山梨県は日本一広いFSC認証を受けた森があるんだよ

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FSC?

縄文時代から人々はクリやコナラなどの森を管理し、燃料や住居の材として木材を利用してきました。それを何百年、何千年と繰り返してきたのですから、そこにはたしかな「知恵」があったはずです。
現代においても、森林資源をいつまでも末永く利用できるように支える国際的な「知恵」としてFSC認証があります。
今回は、FSCのことを山梨県の状況や海外の森林破壊の実情も含めてご紹介します。

FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)とは?

FSCとは森林管理協議会(Forest Stewardship Council)の略。責任ある森林管理を普及させるために設立された国際的な非営利団体で、森林の利用や木材二次加工品の製造に関わる団体へFSC認証森林認証を行っています。

FSC®森林認証とは?

環境や動植物を守り、森林に依存する人々や林業従事者の人権を尊重し、責任ある管理がなされた森林の木や適切と認められたリサイクル資源から作られた木材製品や紙につけられるラベルです。この認証を受けると、木材や木材商品にFSCのロゴマークが刻印されます。ロゴマークが刻印されれば、消費者は一目でそれが持続可能な森林管理の下で採られた木材から作られた製品だと分かります。

つまり、消費者がFSC®マークが入った製品を選ぶことで、『責任ある森林管理』がなされる森が増えていき、全世界の森林保護を後押しできるのです。

『責任ある森林管理』って具体的にはどんなこと?

計画的に植林され、樹木の生育や土壌の状態が把握され、適切な量の森林資源が適正な労働によって利用される森林のことです。また、そこに生息する生物種への配慮や違法伐採がないか、地域社会へ貢献しているか、など環境への影響や社会的側面も考慮している必要があります。

FSCは、環境保全面から見て適切で、過度な利益追求にならず、経済的に継続可能な森林管理を実現する『10の原則と基準』を掲げ、これに基づいて審査・認証を行っています。

FSC認証の10の原則
10の原則と基準

(イラストは「FSC®の原則と基準」FSCジャパンウェブサイトより許可を得て転載)

FSC®森林認証制度には2種類ある

FSC森林認証には2種類あります。
①「FM(Forest Management、森林管理)認証」 責任ある森林管理がなされているかを審査・認証する
②「CoC(Chain of Custody、加工・流通過程)認証」 FM認証森林から得られた認証材が加工から消費者に届くまでの流通の過程を認証する
FSC認証のポイントは、森林の生育から製品が消費者に届くまでの過程に関わる人や組織が認証対象になる点で、いわば、木の『履歴書』が作られる仕組みと言えます。

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FSC認証は2種類ある

(イラストは「森を守るマーク森林認証制度FSCについて」FSCジャパンウェブサイトより許可を得て転載)

山梨でのFSC~日本一大きなFSC認証の森

山梨県有林は、2003年に公有林として全国で初めてFSC森林認証を取得し、現在までFSC森林認証の原則に基づいて、環境保全や地域社会に配慮した持続可能な森林管理が行われています。 南アルプス山系や富士山系、秩父山系などに広がる山梨県の県有林はすべてFSC材であり、その認証面積は実に14.3万ヘクタールです。


これは、FSC認証森林として全国第1位(2019年8月時点)になるとのことで、県有林から切り出されたFSC材は、実際に武田の杜サービスセンターや早川町役場、コンビニの木造建築の建材、『金川の森』公園の遊具やウッドデッキなどに使われました。詳しくはこちらの山梨県のサイトでもご覧いただけます。


なお、2021年現在、山梨県内でFM認証を受けた森林は山梨県有林のみなので、山梨県産FSC材といえば基本的にすべて県有林で育った木ということになります(ただし一部、貸し付け土地などを除く)。

FSC材のウッドデッキ
山梨のFSC材で作られたウッドデッキ(山梨県森林公園『金川の森』)
山梨のFSCの杜
FSC材を育む山梨の森

国際的なFSC認証〜森の育成から商品化までをチェック

たとえFSC森林認証(FM認証)の森から切り出された木材だとしも、CoC認証を受けた企業や団体が作った製品でなければFSCマークは刻印できません。つまり、消費者は商品にFSCマークがあるのを見るだけで、それがたとえ遠く海外で作られた製品だとしても、社会や環境、人に過度な(不当な)負荷をかけずに生産されたものと知ることができるのです。


私たちは日々、南米や東南アジアでの違法な森林伐採のニュースを耳にします。しかし、パルプや輸入材、合板などの日用品がどこで伐採され、どのような労働や環境影響を経て製品になったかを知ることは難しいですが、FSCマークのついた製品が選ばれることで、持続可能(Sustainable)に、かつ、適切に管理される森林(Well-Managed Forest)が増え、森林破壊や地勢劣化を防げるということです。

止まらない世界の森林破壊

今、世界の森林破壊が止まりません。この30年で日本国土のほぼ5個分の面積が違法伐採や農地転用、造成などを原因に消失したと言われています。 そんな世界の森林破壊に日本の消費も深く関与しています。日本で売られる生活品が海外の森林破壊で得られた木材を多く利用しているからです。

日本人が国内消費を通じて海外の熱帯林を破壊した面積は、2015年は2,158平方キロメートル。アメリカ、中国についで世界3位。これは2021年に発表された論文*によるもので、日本の消費者は1年間で一人当たり2.22本の木材伐採を引き起こし、うち2.07本は国外の森林の木であることも報告されました。日本の消費者や企業が、遠く離れた海外の森林破壊に深く関連していることが具体的な数値で示されたことになります。 日本の場合、とくに東南アジアやブラジルの森林破壊への間接的な関わりが強く、大豆や綿、パーム油などの生産を介したものでした。

*Hoang & Kanemoto (2021). Mapping the deforestation footprint of nations reveals growing threat to tropical forests. Nature Ecology & Evolution, 5(6), 845-853.

東南アジアの森林の農地転用の様子
東南アジアの森林の農地転用の様子

以上、『FSCとは?〜国内の森のこと。海外の森林破壊のこと』でした。 SDGsが掲げられるようになった昨今、私たちは森林破壊を進めてしまうような材料や商品ではなく、持続可能な森林管理で生み出された製品を選択していくことが求められているようです。

Article written by ヒノキブンコ

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