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身近な生物『ミノムシ』は絶滅危惧種?ミノムシの正体とは

「身近な生き物の代表格『ミノムシ』が、実は絶滅危惧種であることを知っていますか?ミノムシの一つ、オオミノガは複数の自治体で絶滅危惧種に指定されています。ミノムシを取り巻く近年の状況を交えてミノムシの正体に迫ります。

ミノムシとは?その正体は?

ミノムシとは、枝や葉を自分が吐き出す糸で固めて巣を作るミノガ科に属する蛾の幼虫のことです。ミノは見れても、中にいる虫の姿はめったに見かけませんので、その正体をここでご紹介します。

こんな姿をしています。虫が苦手な人はご注意を。

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ミノムシが属するミノガ科には日本では20種以上知られてますが、身近なミノムシといえば、オオミノガとチャミノガです
オオミノガのミノの大きさは4〜5cmで、チャミノガのミノの大きさは3cm程です。大きさが区別のポイントとなります。
また、ミノの付け根が柔らかそうでぶらんとぶら下がっていたらオオミノガです。一方、ミノの付け根が硬そうでミノを支えているように見えたらチャミノガです。ミノの形もポイントです。ラグビーボールのような紡錘型ならオオミノガ、ホースのような円筒型ならチャミノガです。

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天敵のハエによりミノムシの数が激減

昔は日本のどこにでもいたミノムシでしたが、1990年代後半あたりからオオミノガが激減しています。その原因は、オオミノガヤドリバエという外来種のハエが西日本を中心に増えたためです。

オオミノガはこの天敵から身を守る術がありません。そのため、徳島県、宮崎県で絶滅危惧Ⅰ類(EN)に、神奈川県、山口県、福岡県で絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。絶滅危惧Ⅰ類(EN)は絶滅が差し迫っている区分なので、危機的状況です。

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出典元:NPO法人野生生物調査協会・NPO法人EnVision環境保護事務所 (http://jpnrdb.com

ミノムシの糸の強度は、世界最強と言われていたクモの糸より上だった

そんな危機に晒されているミノムシですが、実は秘められた能力があることも分かってきました。
ルールもなく答えもない、織る人の気分や思いつきが反映され、世界で一つの生地ができあがるということです。


2018年、ミノムシ(オオミノガ)の糸が、それまで自然界で世界最強と言われていたクモの糸よりも強靭であることが分かったのです。弾性、破断強度、丈夫さ、すべての項目でクモの糸を上回りました。

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出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/
press/laboratory/nias/130229.html

将来、ミノムシの糸でできた服や工業品が身近になるかも

ひとつの繭から1,500mもの長い繊維をとることができるシルク(絹)は天然繊維唯一の長繊維です。長繊維は滑らかな肌触りと美しい光沢を生みます。

ミノムシの糸も長繊維です。そのため、現在シルクで仕立てられる衣類や寝具が将来ミノムシの糸でも織られるようになるかもしれません。実際、ミノムシの糸を量産して、工業製品に使う技術が開発され、産業利用の動きが始まっています。

生地だけではありません。航空材料や再生医療にもニーズがあります。たとえば、樹脂に繊維を混合して固めれば軽くて強化プラスチックがつくれるため、自動車や航空機、建築材の未来の材料として利用される可能性があります。すでに、ミノムシの糸を樹脂プラスチックと混合すると、強度が大幅に上がることが確認されています。

以上、「身近な生物『ミノムシ』は絶滅危惧種?ミノムシの正体とは」でした。

written by ヒノキブンコ

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