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オオセイボウとは?〜宝石蜂の異名を持つ青いハチ

日本にはきれな昆虫がたくさんいますが、その中でもひときわ美しい宝石のような虫がいます。その名はオオセイボウ。

見かけることは稀ですが、ここ山梨は比較的よく見かける地域です。

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山梨県韮崎市の市街で見つけたオオセイボウ

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オオセイボウとは?

オオセイボウは大きさ2センチ弱のセイボウ亜科のハチで、本州、四国、九州、沖縄に分布します。ハチですが毒針はなく、刺されることはありません。メスは長い針(産卵管)を持っていますが、柔らかいため人には刺さりません。

体表は緑から青にかけて美しい金属光沢が特徴。「宝石蜂」の異名を持ちます。むかし、藍染めの色は白藍(しらあい)、錆納戸(さびなんど)など40色以上に細かく分けられていたそうですが、オオセイボウはそんな細やかさをたった2センチの体表で再現しているようです。


同じセイボウ亜科にはオオセイボウの他にもクロバネセイボウ、ムツバセイボウ、ミドリセイボウなど国内で30種以上知られていますが、どれも美麗種ばかり♪

ooseibou_04.jpgのサムネイル画像

オオセイボウの変わった生態。寄生蜂

オオセイボウは、幼虫がスズバチの巣に寄生して育ついわゆる寄生蜂です。

他の虫の巣に産み付けられたセイボウの卵が孵(かえ)ると、その巣の幼虫の食料を横取りしたり、あるいはその幼虫自体を食べて育ちます。

こんな残酷な生態を持つセイボウがどれも美しいというのは少し皮肉な話です。巣作りや子育てに労力がかからなかった分、美しさに磨きをかけたということでしょうか。

カッコウやホトトギスも、他の鳥の巣に卵を産み付け、その巣の親鳥に世話させる「托卵」を行いますが、これに似ています。

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オオセイボウの美しさの秘密は虹と同じ?!

太陽の光に当たるとエメラルドグリーンからディープブルーまで、まるで鉱物のような輝きを発するオオセイボウ。ただ一色の青ではなく、何色もの青が合わさってできるグラデーションの色彩は一体、どんな仕組みで生み出されるのでしょうか?

実は、オオセイボウの体表は太陽の光の束を少しだけずらして反射させる構造になっていて、そのおかげでいろんな色が生み出されます。マジシャンがトランプを扇状に広げて、それぞれの図柄を見せるのに似ています。

日々私たちが目にする色には、いくつかの種類があります。

■自ら発光するケース
・スマホのモニタ・テレビ画面・・・LEDなどの電源により自ら特定の色を発光する。
・蛍光塗料・・・吸収した光のエネルギーを蛍光塗料に蓄え、あとから徐々に発光する。
・ホタル・・・・生物が作り出す酵素(ルシフェラーゼ)と基質の反応により、自ら発光する。


■自ら発光しないケース
・色素、ペンキ塗料など・・・太陽の光から特定の色だけを反射させて色が見える(私たちが日常的にみる色はほとんどこれ)。
・セイボウ、ヤマトタマムシなどの金属光沢・・・体表に内部的な層を作り、光を虹のようにずらして反射させることで連続的な色彩を生み出す(色素の一部とも言える)。

テントウムシやカマキリの体が赤かったり緑色だったりするのは、太陽の光を体で吸収して、特定の波長の光だけを反射しているからです。赤い虫は赤色以外の色を吸収し、赤色だけを反射するから私たちの目には赤色に見えます。黒い虫は多くの波長帯の光を吸収し反射しないため、黒く見えます。

一方、セイボウなどは、体表にミクロレベルの微細な層があり、ここに光が当たることで波長ごとに異なるタイミングで反射して分光という効果が起こります。それにより、私たちの目に美しい色彩が届けられるのです。

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これを構造色といいます。セイボウに限らず、ヤマトタマムシやコガネムシ、ハエ、トンボなどたくさんの昆虫がこの原理で色を出しています。

虹は光が空気中の水蒸気の粒がレンズになって分光が起こり、各波長の色が姿を現す現象ですが、構造色はこれに似ています。

構造色の目的ははっきりしていませんが、周辺環境への擬態、天敵の忌避、繁殖行動のアピールなどの役目があると考えられています。

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オオセイボウを見つけるポイントはオミナエシ

オオセイボウはオミナエシ、ケイトウ、オトコエシの花に集まり、その蜜を吸います。中でもオミナエシに多く集まります。

オオセイボウは6月から秋口の10月頃まで活動します。対して、オミナエシは8月〜10月に花が咲きます。そのため、夏から秋口にかけて、オミナエシの群落を訪れればオオセイボウを見つけられる可能性が高いでしょう。

秋の七草の一つでもあるオミナエシは、山梨県なら標高800m〜1000mくらいの公園や草原に自生しています。公園によっては昆虫採取禁止の場合もあるので、事前に確認しましょう。

俊敏に飛ぶオオセイボウですが、飛行中にもメタリックブルーの体がキラッ、キラッと輝くのですぐに分かりますよ!

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オミナエシの群落

以上、「オオセイボウ〜青蜂、宝石蜂の異名」でした。もう少し涼しくなったら、宝石蜂を探しに、山地寄りの公園に出かけてみてはいかがでしょうか?

written by ヒノキブンコ

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