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120年ぶりに⽵が咲く〜⽵の開花が只今進⾏中!そのあと⼀⻫に枯れる不思議の ワケは?

竹の花と聞いてもイメージが湧きませんが、それもそのはず。竹が花を咲かせるのは120年に一度だけ。

その世紀の開花がなんと今、全国で起こっています。

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竹の花。長く垂れ下がっているのがおしべ

今咲いているのはハチク(破竹)

今咲いているのはハチク(破竹)です。

日本におよそ250種類生息すると言われる竹ですが、ハチクはマダケ、モウソウチクと並び日本三大有用竹の一つ。全国に分布する一般的な竹です。

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古文書をたどると、種ごとに開花周期が決まっていることが判り、ハチクとマダケはおよそ120年、モウソウチクは60年だそうです。

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そんな身近な竹の花を、私たちは今、近所の山や道ばたで見かけるチャンスがあります。

竹の開花は数年かけて起こります。2020年頃から全国でハチクの開花が始まり、来年も4〜6月頃に開花すると考えられます。荒川河川敷では11月に開花した報告もあります。

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竹の開花。2024年に北杜市須玉の道路脇にて

開花の後は一斉に枯れる

開花のあと、竹は一斉に枯れることが知られていましたが、今回もやはり開花後にほぼ例外なく一斉に竹が枯れています。緑の山肌に竹が枯れた茶色い痕(あと)が現れるのは、なんとも不思議な光景です。

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竹が枯れてくれるなら助かる⁉ハチクの場合、そうはいかず・・・

「庭の竹は切っても切ってもすぐ生えてきて、なかなか無くせない」
「竹が自分から枯れてくれるなら、それはそれで助かる」

そんな声も聞こえてきそうですが、ハチクの場合、そうはいきません。たしかに竹は開花後、枯れてしまいます。モウソウチクやマダケなら、竹林は根っこごと枯死して竹林自体なくなります。

しかし、ハチクの場合はすぐにまた生えてくることが多いようです。一部の根っこ(地下茎)が生き残り、そこから新しいタケノコが生えてきて、その竹林を維持するからです(全滅して竹林がなくなるケースもあります)。

なぜ開花して枯れる?有性生殖と無性生殖の妙

竹に限らず植物の開花について考えるには、無性生殖と有性生殖について知っておくといいでしょう。

無性生殖:受精、受粉を経ない生殖。雄と雌、おしべとめしべを必要としない。地下茎、アメーバの細胞分裂、挿し木など。親個体と同じ遺伝子やゲノムを持つ。手早く増殖できるが、同じクローン集団なので環境変化や病気・ウイルスに弱い。

有性生殖:受精、受粉を経て異なる個体同士のゲノムを混ぜ合わせる生殖(自家受粉も含む)。動物の交尾、交配、受粉など。実(たね)は別ゲノムなので集団としては環境変化や病気・ウイルスに強くなる。


植物の多くは地下茎や挿し木などで個体を増やすことができるので、単に数を増やすだけならこの無性生殖に特化すればよかったはずですが、ほぼすべての植物がかなりの時間とエネルギーをかけて花を咲かせ、受粉を介して実を付けます。

これは遺伝的な多様性を担保するためです。無性生殖を繰り返すと、その個体の中に遺伝的変異が蓄積されていき、うまく機能しなくなる遺伝子も出てきます。また、クローンだけからなる集団はいずれやってくる環境変化や新たな競合相手との生存競争、病気・ウイルスの感染で一気に不利になってしまうリスクが高いと言えます。

だから、個体同士の遺伝子を交配して、あらかじめいろんな遺伝的形質を持った多様な子孫を作ります。集団として遺伝的多様性を獲得するわけです。そんな有性生殖は、植物に限らず動物、魚、鳥など地球上のあらゆる生物にとって、永遠のテーマと言えます。

今うまくいっているからといって、いつまでも同じでいいということはありません。悠久の時がそれを教え、生物は有性生殖を発見したのです。

一般に有性生殖のあとに植物が枯れるのは世代交代のためと言われますが、ハチクについてはさらに「普通ではないこと」があります。

ハチクは花が咲いても種ができない⁉

普通ではないこと、それは「ハチクは花が咲いても実(たね)が全くできずに枯れる」ことです。生き残った地下茎から新芽が出てくるため、開花しても有性生殖はせず、結局無性生殖で生き続ける、というなんとも不条理な謎です。今進行しているハチクの開花もやはりそのあと実はできていないようです。

日本のハチクは奈良時代に中国から入ってきたと言われています。仮にそのときから実を付けていないとすると、1,000年以上も無性生殖で生き続けてきたことになります。

そんな一風変わった生存戦略の正体を、今回の開花で研究者たちは明らかにしようとしています。なにせ、今回120年ぶりの開花ですから、調べることはいっぱい。


以上、120年ぶりに花が咲いている竹、ハチクについてでした。

わからないことだらけの竹ですが、竹の花を見つけたらとりあえず記念撮影♪孫の代まで自慢できますよ!




Article written by ヒノキブンコ

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