物価とは?お金の価値・モノの価値とは?中学生にもわかりやすく解説
『昔は自動販売機の缶ジュースが80円で買えた』って、おじいちゃんが言ってたけど本当?
うん。1980年代、缶ジュースは100円だった。今は130円で買えれば安い方だよね
どうして値段が高くなるの?
それはモノが高くなるというよりも、お金の価値が低くなっていると言えるんだよ
え?どういうこと?
最近、食料品や日用品をはじめとして、モノの値段、すなわち物価が上がっています。いろいろなモノが値上がりするのはうれしくないでしょう。しかし、物価が上がるのは、今に限ったことではありません。昔と比べると、モノの値段は何倍にも上がっています。
そこで、なぜモノが高くなるのか、お金の価値とモノの価値についてわかりやすく説明します。自分の資産価値を減らさない対策もお伝えします。
1. 実例!お金やモノの価値はこんなに変化している
モノの値段は昔と比べてどのくらい上がっているのでしょうか?いくつか例を挙げて、理由を考えてみましょう。
1-1. 缶ジュースの値段 昔は80円、今は130円?
缶ジュースの値段が80円だった時代もありました。今は自動販売機で買う場合でも130円くらいします。中身は同じ飲料なのになぜ値段が上がるのでしょう?その答えは、缶ジュースの費用を分解して考えると見えてきます。缶ジュースの費用において中身の原材料費はあくまで費用の一部であり、さまざまな費用を加算したうえで、缶ジュースの値段は決定されます。
・原材料費など
缶ジュースの原材料である食品や缶やペットボトルなどの包装材料の価格が高騰。
・製造費など
缶ジュースの製造にかかわる人の給料や機械や設備の費用、製造過程で使用する燃料や光熱費なども高騰。
・販売費など
缶ジュースを運ぶトラックの燃料代や広告宣伝費や経費なども高騰。
このように缶ジュースの値上げは、単純に中身である原材料費のみが値上がりしたのではなく、さまざまな原価費用が、時代が進むにつれて少しずつ値上がりした結果、商品価格の値上げにつながっています。競合の激しい飲料業界において、今まで企業努力で値上げを抑えることができた時代は過ぎ、缶ジュースの値段はどんどん上がってきているのです。
1-2. ガソリンの値段 20年前はリッター90円? 今は170円?
・原油価格
ガソリンの原料となる原油の価格
・加工・輸送費など
原油を輸送・精製・販売する過程で発生する人件費、輸送費、設備費など
・税金
主に揮発油税、消費税
そのうち、大きな割合を占める原油価格の高騰が、ガソリン値上げの大きな要因となります。それでは、なぜ原油価格が上がるのでしょうか?それには主に次のような理由が考えられます。
・世界中でガソリンを使う人が増えている
世界経済が回復し、ますます車や飛行機を使う人が増えているため、ガソリンの需要が高まる。
・原油を産出できる国の数が少ない
原油を産出できる国は限られており、近年は戦争や政情不安などの影響で、減産しているところもある。
・円安により日本にとって原油価格が高騰
ガソリンは海外から輸入されているため、円安になると輸入コストが上昇し、日本にとってガソリン代は値上げされる。
ガソリンの原料である原油は、圧倒的に多い世界の需要に対して、供給される量や産出できる国が少ないため、必然的に値上がりしやすい環境にあります。供給者や競合が多い缶ジュースの場合は、市場環境を踏まえて企業努力で費用を抑えなければならなかった時代もありましたが、ガソリンは供給者や産出国のさまざまな動向ありきで原油価格が高騰し、結果としてガソリン価格の値上がりにつながりやすいのです。
1-3.明治時代の500円は、現代に換算すると1,000万円?!
そもそも、お金そのものの価値も変わっています。昔の1円は、今の1円と同じではありません。今と昔のお金の価値を比較する指標として、企業物価指数があります。企業物価指数とは、企業間で取引される際の財(モノ)の価格です。
企業物価指数のうち、昭和9年(1934年)から昭和11年(1936年)の平均を1とするのが戦前基準指数です。戦前基準指数によると、明治34年(1901年)は0.469、令和5年(2023年)は876.3と、明治から令和にかけて約1,900倍になっています。この指数によると、明治時代の1円は今の1,900円、明治時代の500円は今の95万円となります。
なお、モノやサービスの種類によって価格の上昇率は異なるため、昔のお金の価値と今のお金の価値を単純に比較はできません。例えば、明治時代の小学校の教員の初任給は1ヵ月で8~9円だったことと現在の初任給が約20万円であることを比較すると、約2万倍に増加しています。つまり明治時代の500円は今の1,000万円とも考えられるのです。
2.そもそも物価って何?お金の価値って何で決まるの?
物価は需要と供給のバランスによって決まります。需要とはモノが欲しい人がどれくらいいるか、供給は市場にどれだけのモノがあるかということです。
モノが欲しい人が増えた場合、市場に供給されるモノの数が変わらなければ、物価は上がります。逆に、市場に供給されるモノの数は変わらないのに、欲しい人が減ってしまうと物価は下がります。
物価が上がると、相対的にお金の価値が下がります。例えば、リンゴ1個が100円から120円に値上がりしたとしましょう。以前は100円を持っていればリンゴ1個と交換できたのに、今は100円を持っていてもリンゴとは交換できません。リンゴ1個と交換するには120円が必要になります。100円にはリンゴ1個分の価値もなくなっているため、お金の価値が下がっているのです。
モノの価値が上がり、お金の価値が下がり続けることを「インフレーション(インフレ)」といいます。インフレになると会社の売上が増えて儲けが増え、給料が上がってモノを買う人が増えます。ますますモノが売れるようになり、モノの値段がさらに上がります。お金の価値がどんどん下がって、貯金も目減りしてしまう状態はうれしくないでしょうが...。
逆に、物価が下がってお金の価値が上がり続けることは、「デフレーション(デフレ)」と呼ばれます。デフレになってモノが安くなるのは良いことのように思うかもしれません。しかし、デフレになると、会社の売上が減って儲けが減り、給料が減ったり失業する人が増えたりします。結果、モノを買う人が減り、ますますモノの値段が下がります。インフレとデフレのどちらが良いというものではなく、モノの値段は安定しているのが理想です。
3. なぜモノの価値は上がり続けるの?
物価は安定しているのが理想とはいえ、モノの値段は昔と比べて随分上がっています。なぜモノの値段は上がり続けるのでしょうか?
モノの価値が上がり続ける理由として、主に経済成長が挙げられます。経済成長にともなって需要と供給は増加するのが一般的です。経済が成長すれば雇用も安定して、製品やサービスのイノベーションが生まれ、消費を喚起します。こうして、全体的に緩やかな物価上昇につながっていくのです。
物価が急激に上がるのは困りますが、経済成長にともなって安定的に上昇することは好ましいことなのです。そのため日本銀行でも物価上昇率2%を目標に金融政策を行っています。
4. 物価が変わる中、知っておくべきこと、大切なことは?
物価上昇が続いてインフレになると、お金の価値は目減りしていきます。お金の価値を守るためには、物価上昇にともなってお金も増えていく状態が理想的です。 今は預貯金金利よりも物価上昇率の方が上回っています。預貯金で多少の利子が付いていても、実際の自分が持っている資産の価値は目減りしていることになります。
そこでインフレになってもお金の価値を減らさないために、資産運用を検討することが必要になってきます。 物価上昇に合わせて価格が上昇する資産に投資すれば、インフレによる悪影響を防ぐことができます。例えば、インフレ下では株価は上昇しやすいため、株式を購入することで資産を守るという考え方があります。そのため政府も「貯蓄から投資へ」というスローガンを元に、「人生100年時代」に個々人ライフプランにあわせた資産形成を応援するためにNISA(少額投資非課税制度)を抜本的に拡充し、国民の投資による資産形成を応援しています。
インフレに備えたいけれど、お金をどのように運用したらよいかわからないという方は、「【貯める・増やす|初心者向け】普通預金から金融商品などの資産運用まで分かりやすく解説」もぜひ読んでみてください。
5. まとめ
物価は需要と供給のバランスによって決まります。昔と比べて物価は上がり、お金の価値も変わっています。物価が上昇を続けインフレになれば、お金の価値は目減りしていきます。「人生100年時代」の今、長い老後生活においてお金の価値が目減りしても、健やかな人生を守るために、個々人のライフプランにあわせた資産運用を考えてみましょう。
資産運用に関心がある方は、2024年から始まった新NISAを解説した「新NISAとは?つみたてNISAがなぜそんなに?デメリットは?銀行が解説」の記事もご一読ください。
森本 由紀 (もりもと ゆき)
ファイナンシャルプランナー(2級FP技能士・AFP)、行政書士
神戸大学法学部卒業後、鉄鋼メーカー、特許事務所、法律事務所での勤務経験を経て独立。
ライフプランやマネープランの見直しを含めた総合的なサポートを提供。契約書・利用規約作成や、相続関係業務にも携わる。
法律・マネー系サイトでの記事・コラムの執筆も数多く担当。年金、税金、保険、資産運用などについて、初心者でも理解しやすい解説を心がけている。