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くらむぼんワイン (Feature of Kurambon wine)

くらむぼんワイン_外観01

くらむぼんをみつけたよ。

 毎年秋に開催されている「ワインツーリズムやまなし」。MAPと試飲グラスを携えて意中のワイナリーをおのおの訪ねる自由度の高さ、生産者と直接顔を合わせコミュニケートできるところが人気のイベントツアーです。
 その中でひときわ、気になる名前のワイナリーがありました。宮沢賢治の童話「やまなし」に登場するカニの兄弟が話していた、記憶の片隅に残っている言葉が甦ります。「クラムボンはわらったよ」の「くらむぼん」。何を指すかは諸説あり、それが何かと定義するのは無粋というもの。ロマンあふれる気の利いたネーミングセンスに自然と足が向きます。長い歴史を持ち、山梨産のワインに新たな革新をもたらす、くらむぼんワインを訪ねました。

くらむぼんワイン_外観02

くらむぼんの名に込めた思い。

 玄関の敷居をまたぐと、心地良い静寂と木造古民家の温かみに包まれます。正面にはワインショップ。ショップに隣接した部屋には、古くから収集されてきたワインにまつわるレトログッズや、ワイン造りに使われる古道具など、ワイン造りの歴史を知るうえで貴重な品々が展示されています。先代が集めていたもので、くらむぼんワインは大正2年創業。初代である野沢長作が自家ブドウを使い醸造を始めてから、日本ワイン発祥の地、山梨県勝沼で104年の歴史を重ねます。
 ワイナリーのロゴマークにも使われ、くらむぼんのシンボルである築130年以上の母屋は、もともと養蚕(ようさん)を営み、シルクを紡いでいた農家の屋敷を移築したものです。玄関口の左手から奥へと続く、縁側から差す光が美しい客間にて4代目野沢たかひこさんは、静かな語り口で、くらむぼんワインの歴史とこだわりについて話してくれました。くらむぼんワイン_内観01くらむぼんワイン4代目 野沢たかひこさん

くらむぼんワインの4代目 野沢たかひこさん

 創業104年という歴史を誇るワイナリーの名前に、新鮮さを感じたのは、気のせいではありませんでした。一昨年、社名を変更したのだといいます。もともとの名は山梨ワイン。2013年からワインの地理的表示基準により、山梨県産ブドウ100%のワインにはラベルに「山梨」と表示することが義務づけられています。
 社名と産地表示を区別するためでもある新社名は、宮沢賢治の童話「やまなし」に登場する「クラムボン」からとったといいます。「宮沢賢治は自然との調和を大切にしている作家です。私たちのワイン造りに通じる部分 が多くあったのです」。

くらむぼんワイン_内観02

くらむぼんのワインづくり

 代々受け継がれてきたワイン造りでしたが、先代のころ野沢さんは、当時の山梨のワインにあまり魅力を感じていなかったそうです。しかし、南仏のニースに語学留学をした際に、地域の食材を活かした南仏料理とワインとのマリアージュが、野沢さんのワインへの見方を変えました。ワインとはこんなにもおいしく、心躍るものなのかと。
 帰国したときには、日本のワイン造りも、より本格的になり、盛り上がりとともに品質も向上していました。山梨でしか造れないおいしいワインを造りたい。こうして4代目を受け継ぐことを決意して、野沢さんの挑戦は始まったのです。
 土地特有の風味を指すテロワールの追求を胸に、ワイン造りに励みます。さらに、フランスの南西部にて「ビオディナミ」と呼ばれるワインとの出会いが、大きな転換のきっかけとなりました。ビオディナミとは自然派ワインの中でも、一歩進んだ製法として注目されています。
 化学的な要素を減らすだけではなく、自然の力を引き出し最大化することに重きを置く考え方です。膨大な時間と手間がかかる代わりにテロワールをダイナミックに味わうことができるのです。くらむぼんワインの自社農園

 ビオディナミワインとの出会いを機に、2007年、自社ブドウの栽培を化学農薬や殺虫剤を使わず、耕さず、肥料も与えない自然栽培にシフトし、発酵に使う酵母もブドウの果皮に付く土着の天然酵母を使用することにしました。
 「ブドウが傷むので、最初は病気などに悩まされましたが、だんだんと強くなって環境に適応していくんです」。自然の持つ力を信じ、調和することを目指したワイン造りが、くらむぼんワインの大きな特長です。
 自然のままにおいしいワインを。畑は勝沼の鳥居平地区とワイナリー近くの七俵地の6つあります。合わせて2ヘクタールの敷地面積を持ち、その半分で日本原産の「甲州」を栽培しています。ほかには、マスカットべーリーA、アジロンダック、カベルネソーヴィニヨンなどを栽培しています。
 ワインセラーは重厚な雰囲気が漂い、地下へと続いています。90年前に手で掘られたもので、貯蔵に使われる樽はフランス産のオーク樽を使用。使用する樽の産地によって、樽が本来持つ香りがワインの味に大きく影響するそうです。このように、栽培から貯蔵に至るまで、自然本来の持つ力、環境との調和をもって一貫したフィロソフィーのもと野沢さんはワイン造りを行っています。

くらむぼんワイン_ワイン蔵01くらむぼんワイン_ワイン蔵02

 目指すのは口に含んだときに、勝沼の地を思い浮かべるようなワイン。そのために、長い歴史に支えられるワイン造りを一つ一つ見直し、自然栽培を実践しているのです。
 「待て待て、もう二日ばかり待つとね、こいつは下へ沈んで来る、それからひとりでにおいしいお酒ができるから、さあ、もう帰って寝よう」。宮沢賢治の「やまなし」の最後、川の水面に落ちた梨を見上げて、カニの父親が子どもたちに言い聞かせます。くらむぼんワインの精神に通じる一幕です。
 手を加えずに、自然のままに。自然との調和には、待つという忍耐力が必要です。結局、人にとっては時間も手間もかかるということ。その代わりにおいしいワインが出来上がる。野沢さんの静かなる挑戦は、自然との対話を通して続いていきます。くらむぼんワイン_外観03くらむぼんワインのボトル

 左から、アジロンダックを使用した「あじろんスパークリング」イチゴのコンポートのような甘みと果実味が特徴です。甘口ですが、スパークリングで爽やかに。
 「シャルドネ七俵地畑収穫」は、自社の垣根栽培のシャルドネを100%使用。天然酵母で仕込まれ、山梨勝沼のテロワールを味わえるくらむぼん珠玉の一本です。
 柑橘系の果実味と樽香が薫る「ソルオリエンス甲州」自社農園の甲州を使用し天然酵母で発酵。無ろかのまま自然の恵みを味わいます。ソルオリエンスはラテン語で日の出の意。日出ずる国、日本のワインにふさわしいネーミングです。

Article written by VALEM co., ltd.



くらむぼんワイン
〒409-1313 山梨県甲州市勝沼町下岩崎835
TEL:0553-44-0111
※ここから外部へリンクします。料金などの詳細は下記リンクを参照してください。
http://www.kurambon.com

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